クラミジア感染症

@クラミジア感染症とは・・・

 クラミジア・トラコマティスと呼ばれる微生物によって感染。ウイルスのように宿主細胞でのみ増殖する性質と細菌のようにDNAとRNAとをともにもち、両者の中間的な性質をもつ。従来は眼病のトラコーマ・慢性角結膜炎、鼠径リンパ肉芽腫の病原体として知られていたが、近年は尿路性器粘膜細胞への感染が注目され、女性の子宮頸管や男性の尿道が中心となっている。

A主な症状

男性の場合 : 感染後10〜20日の潜伏期間のあと、オシッコの際に違和感や痛みを感じるほか、
          やや水っぽいウミが出る。

女性の場合 : 白い粘液状のおりものが増えるといった程度で自覚症状が軽く気づきにくく、知ら
          ないうちに菌が卵管や骨盤に達して不妊症や子宮外妊娠の原因となることも。

B感染経路

 性的接触をすることによって、尿道・膣・咽頭・眼・などの粘膜に感染する。


C感染状況

  日本におけるクラミジア感染症患者の推移

 現在クラミジア感染症はSTDの中でもっとも流行している疾患である。特に、男性に比べ、若い女性にクラミジア感染率が増加している。この原因として男性の場合、ある程度の自覚症状があるため比較的治療されるのに比べて、女性の約8割は無症候性ではっきりした症状が出ず放置されてしまうケースが多いからである。また、性行為経験年齢が若年化していることにともない、高校生などの若年層でクラミジア感染症が大流行している。


D検査

 クラミジアの検査には1.クラミジア抗原検査2.クラミジア抗体検査の2種類があるが、クラミジア感染の診断には一般的に抗原検査が用いられる。抗体検査は補助診断として利用される。
1.クラミジア抗原検査 : 抗原検査法として1、蛍光抗体法 2、免疫学的検査法 3、遺伝子診断法
                 の3種類に分けられる。
  1、蛍光抗体法
測定法 検査試料 測定原理
直接蛍光抗体法 擦過組織 尿道又は子宮頸管より採取した上皮細胞と蛍光物質で標識したクラミジア・トラコマティス抗体を直接に反応させる。この蛍光量によりクラミジア抗原量を測定する
  2、免疫学的測定法
測定法 検査試料 測定原理
酵素抗体法(EIA) 擦過組織 綿棒で採取した試料中のクラミジア抗原とクラミジア抗体を用いて、抗原抗体反応を起こさせ、そこに酵素を付ける。その酵素を発色させ、発色量によりクラミジア抗原量を測定する
化学発光酵素免疫測定法(CLEIA) 擦過組織 綿棒で採取した試料中のクラミジア抗原とクラミジア抗体を用いて、抗原抗体反応を起こさせ、そこに酵素を付ける。その酵素を発光させ、発光量によりクラミジア抗原量を測定する
  3、遺伝子診断法
測定法 検査試料 測定原理
DNAプローブ法 擦過組織 綿棒で採取した試料からクラミジアのリボゾームRNAを溶出し、これに化学発光物質で標識したDNAプローブとハイブリットを形成させ、化学発光量によりクラミジア抗原量を測定する
遺伝子増幅法(PCR法・LCR法) 擦過組織 クラミジア中のDNAを数十万倍に増幅させ、検出感度を高めクラミジア抗原量を測定する
2.クラミジア抗体検査 : 抗体検査法として1、補体結合反応 2、蛍光抗体法 3、免疫測定法
                 の3種類に分けられる。
 1、補体結合反応
測定法 検査試料 測定原理
補体結合反応 血清 補体とは抗原抗体反応における補助因子であり、抗原抗体反応で補体が結合し活性化され消費される。試料中にクラミジア抗体があればクラミジア抗原と抗原抗体反応を起こし、補体が消費されればクラミジア抗体陽性となる。しかし、補体の消費は肉眼的に観察できないので、感作赤血球をくわえ溶血反応が起こるかどうか観察し補体活性の有無を判定する。完全溶血の場合は陰性・不溶血あるいは弱溶血の場合は陽性。
  2、蛍光抗体法
測定法 検査試料 測定原理
micro‐IF法 血清 クラミジア・トラコマティスの基本小体を抗原とし、試料中のクラミジア・トラコマティス抗体と抗原抗体反応を起こさせ、そこに蛍光物質を付ける。この蛍光量によりクラミジア・トラコマティス抗体量を測定する
      *クラミジア・トラコマティスとクラミジア・シッタシ鑑別がある程度可能
  3、免疫測定法
測定法 検査試料 測定原理
固相酵素免疫測定法(ELISA) 血清 固相にクラミジア抗原をおいて、試料中のクラミジア抗体と抗原抗体反応を起こさせ、そこに酵素を付ける。その酵素を発色させ、発色量によりクラミジア抗体量を測定する
     
E治療法
治療薬として、テトラサイクリン系薬剤が第1選択となり、マクロライド系およびニューキノロン系薬剤が用いられることもある。このような抗生物質の経口投与で一般的に2〜4週間でクラミジアが消失する。また、クラミジアは症状の軽さから感染に気づかず、母子感染を起こしてしまう心配もある。赤ちゃんへの感染は35〜36週頸管粘液を検査し陽性であれば抗生物質を服用して治療することで、産道感染を予防する。
服薬終了後は治療の確認のために必ず再診し、クラミジアの有無を検査することが重要である。また、性的パートナーの診断、治療も必要であり感染拡大の予防に努める。