@B型肝炎とは・・・

 B型肝炎ウイルス(HBV)と呼ばれるウイルスの感染により発症する。B型肝炎ウイルスによって肝臓の肝細胞が破壊されてしまう病気で、肝炎にはB型肝炎のほかにA型肝炎、C型肝炎などがある。B型肝炎ウイルスは血液、唾液、精液、膣分泌液に潜み、セックスの際の傷から感染しやすい。

A主な症状

潜伏期は1ヶ月から2ヶ月。だるく疲れやすくなるとともに、不眠症、食欲不振、吐き気、微熱、下痢を起こす。また、肝周辺に鈍い痛みを感じる。尿が赤茶色っぽくなって、目や肌、粘膜に黄疸が出始める。症状が進むと肝硬変や肝臓癌を併発することもある。

B感染経路

 血液や体液を介して感染。性行為では傷口から精液などの混入によって感染する。また、母子感染の感染率が高く、HBs抗原陽性では85〜90%。

C感染状況

  日本におけるB型肝炎患者の推移

 日本には約120万人のHBV保有者がおり、そのうち年間約3500人が死亡している。

D検査

 B型肝炎検査には1.B型肝炎ウイルス抗原検査2.B型肝炎ウイルス抗体検査の2種類があるが、B型肝炎ウイルス感染の診断には一般的に抗原検査が用いられる。HBV感染症の臨床検査ではHBs抗原・抗体、HBc抗体、HBe抗原・抗体量が重要となる。
 HBVは形態的に直径22nmの小型粒子、管状粒子、直径42nmの大型の球形粒子(Dane粒子)が認められる。この大型粒子には、中央にcore(芯)があり、これがHBc抗原で、表面を包んでいる外皮および小型粒子、管状粒子はHBs抗原である。HBs抗原陽性であることは、現に感染中であることを示している。HBc抗原内には遺伝情報を伝えるDNAとDNAポリメラーゼを持っており、DNAポリメラーゼ活性は濃厚感染の場合に検出される。HBe抗原はHBc抗原由来のものと考えられており、DNAポリメラーゼ活性と同様に感染が濃厚な人の血液中に検出される。また、HBe抗原は母子感染に重要であり、HBe抗原陽性の母親からの子供は無症候性HBs抗原陽性者なる頻度が高い。陽性となった子供の約90%は無症候で経過するが、10%は10〜30歳ころまでに慢性肝炎に移行し、さらに一部は肝硬変、肝癌に進展する。
 そして、HBVの感染によりHBs・HBc・HBe抗原が検出されるが、体内の免疫力によりHBs・HBc・HBe抗体が産生され、これらの抗原を中和していく。そのため、抗原が陰性化し抗体が出現するようになるとHBV感染の非活動化、鎮静化および既往と診断される。
 主な検査としてはHBs抗原検査が用いられている。


                         (難治性肝炎の概要より)
HBV抗原・抗体 臨床的意義
HBs抗原 HBV感染中
HBe抗原
DNAポリメラーゼ活性
HBV感染の活動中
HBVの活発な活動
HBe抗体 HBVの非活動化
肝炎発症の抑制状態
HBc抗体                   高抗体価 HBV感染の活動中
低抗体価 HBV感染の鎮静化および既往
HBs抗体 既往のHBV感染(治癒期)
1.B型肝炎ウイルス抗原検査 : HBV抗原検査ではHBs抗原、HBe抗原が可能。検査法として 
                    1、凝集法 2、酵素免疫測定法 の2種類に分けられる。

  1、凝集法
測定法 検査試料 測定原理
逆間接赤血球凝集反応(RPHA法) 血清 HBV抗体を感作させた赤血球に試料を加えると、試料中のHBV抗原と抗原抗体反応が起こり、赤血球の凝集が認められる。この凝集の有無でHBV感染を判定する
  2、酵素免疫測定法(EIA法)
測定法 検査試料 測定原理
固相酵素免疫測定法(ELISA) 血清 固相にHBV抗体をおいて、試料中のHBV抗原と抗原抗体反応を起こさせ、そこに酵素を付ける。その酵素を発色させ、発色量によりHBV抗原量を測定する
化学発光酵素免疫測定法(CLEIA) 血清 酵素を標識したHBV抗体を用いて試料中のHBV抗原と抗原抗体反応を起こさせ、標識した酵素を発光させる。この発光量によりHBV抗原量を測定する
2.B型肝炎ウイルス抗体検査 : HBV抗体検査ではHBs抗体、HBc抗体、HBe抗体が可能。
                     検査法として1、凝集法 2、酵素免疫測定法の2種類に分けられる。

  1、凝集法
測定法 検査試料 測定原理
間接赤血球凝集反応(PHA法) 血清 HBV抗原を感作させた赤血球に試料を加えると、試料中のHBV抗体と抗原抗体反応が起こり、赤血球の凝集が認められる。この凝集の有無でHBV感染を判定する
  2、酵素免疫測定法(EIA法)
測定法 検査試料 測定原理
固相酵素免疫測定法(ELISA) 血清 固相にHBV抗原をおいて、試料中のHBV抗体と抗原抗体反応を起こさせ、そこに酵素を付ける。その酵素を発色させ、発色量によりHBV抗体量を測定する
化学発光酵素免疫測定法(CLEIA) 血清 酵素を標識したHBV抗原を用いて試料中のHBV抗体と抗原抗体反応を起こさせ、標識した酵素を発光させる。この発光量によりHBV抗体量を測定する
E治療法
B型肝炎の治療法は、薬物療法、安静療法、食事療法の3つがある。薬物療法といっても特効薬はなく対症薬で、破壊された細胞の再生・修復に必要な栄養素を補給してり、肝細胞の働きの一部を肩代わりするための薬が使われる。そして、なによりも大事なのが安静療法。しかも、ただじっとしていればよいというのではなく、寝ていなければならない。これは、肝臓に十分な血液を流れさせるため。黄疸が出てから1週間程度は安静を守るべきとされている。食事療法では、肝組織の再生能力を高めることを目的とし、それに必要なエネルギーと栄養素を補給するため、高エネルギー、高たんぱく、高ビタミンが基本となっている。
B型肝炎